No.033 会社法と取締役

昨年末から世界中でニュースに取り上げられている日産自動車前会長カルロスゴーン氏。

主に、日本の司法制度の問題か、ゴーン氏の金融商品取引法違反及び特別背任罪の疑いに対する訴訟案件の進捗を取り上げるニュースが多く発信されました。

企業の経営の重要な役割を果たしてきた人の不正疑惑のニュースだから、身近なことではないかもしれません。

ですが、「背任罪」というのは、ざっくり言えば、契約関係にある個人と法人の間で、個人が自己や第3者の利益をもたらすまたは企業側に不利益をもたらすことを目的とした行為に対しての罪ですので、働く人にとって全く無関係とはいえないのではないでしょうか。

営業パーソンであれば、まさに会社や株主の利益に直接かかわる職務を遂行しているわけですから、他人事ではありません。

少なくとも、基礎知識はもっておいて損はないでしょう。

 

今回は、取締役という立場がどういうものか解説します。

 

そもそも、法人とは

会社とは

まず、「会社」とはなにかを説明します。

「会社」は、法律(会社法)によって成立する「法人格」、つまり「権利・義務の主体となりえる地位・資格」を有した「法人」です。

 

株式会社とは

法人の中でも、「株式会社」は営利を目的とした「私法人」です。

この株式会社というのは、「社員(会社法で定めた株主を意味する用語)」から資金を集めて、経済活動を行いそれによって得た利益を配当などの形で「社員」に分配することで成り立つ組織体です。

分類については、No.031 企業の歴史 もご参照ください。

 

会社法と取締役

会社法とは

続いて、この会社を対象とした法律、「会社法」がどういうものか説明しておきましょう。

会社法は、会社の設立から解散、組織運営や資金調達まで、会社に対するあらゆるルールを法律としてまとめたものです。

一般法である「民法」の適応範囲を、営利法人である会社に限定したものが会社法であり、一般法に対して特別法として区別されます。

一般法や特別法の意味合いについてはまた別の機会に解説したいと思います。

 

会社法の役割

株式会社は、法的には「人」(法人格)ですが、実体はありません。そこで、株式会社が健全に機能する、つまり会社経営が行われるべく意志や能力を持たせるためにその主体となる人を用意しなければなりません。この人およびその役割を含めて「機関」といいます。

例えば、「取締役」はすべての株式会社に必ず置かなければならない機関であると「会社法」に規定されています。

また、「株式会社」は合理的に経営されるために株主総会を始め、取締役会、監査役、あるいは会計参与などの機関を設置しなければなりません。

どのような機関を持つかは、各会社ごとに設計する自由度はありますが、すべての株式会社に必置の機関が株主総会と取締役となります。

このように、「会社法」には、これら機関の設立や解散に関する条項が設けられています。

これ以外にも、「会社法」には資本金、株式の交換・移転、会社の合併・分割や事業譲渡に関する事項も規定がありますが、また別の機会に触れる事とします。

 

取締役とは

更に、取締役会設置会社においては、取締役は3名以上でなければならないとされています。

取締役、監査役の選任・解任は、「株主総会」で決議することで決定されるのが原則です。

また、代表取締役、執行役や各委員会の委員の選定・解職は「取締役会」で決定されます。

そして、取締役は取締役会の一員として業務執行の意志決定を行う他割り当てられた業務の執行を行います。

同時に、取締役は職務を行う上で「善管注意義務」及び「忠実義務」をも負っています。

 

取締役が果たすべき義務

取締役には果たすべき義務があるとお話しましたが、この「善管注意義務」や「忠実義務」とはなんでしょうか?

聞きなれない、なじみのない言葉かもしれません。

会社法の第330条で、株式会社と取締役の関係は民法における委任に関する規定に従う、とされています。

上記規定が適用される結果として、取締役に課される義務が生じます。

 

その内の代表的なものとして「善管注意義務」に注目しましょう。

以下が、会社法にある「善管注意義務」に関する条文の一つです。

「取締役は、受任者は委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって委任事務を処理する義務を負います。(民法第644条の適用)」

つまり、取締役は、経営のプロとして通常期待される注意義務を果たさねばならないわけです。

では。経営のプロとして期待される注意義務とは?

ここで、2015年11月7日の新聞の記事から一部を抜粋します。

「某社は7日、会計不祥事を巡る経営責任を調査した外部委員会の報告を受けて、歴代社長3人と当時の最高財務責任者(CFO)2人の合計5人を相手取り損害賠償請求訴訟を東京地裁に起こしたと発表した。」

同社は、社外の弁護士の協力を得て調査した結果、旧経営陣が不適切な会計を認識しながら、是正の指示を怠ったと判断しました。

つまり、旧経営陣の内の5人の取締役は、不正やミスを避けるように注意して職務を遂行する「善管注意義務」に違反し、結果として会社に損害を与えた、というのが提訴の主な理由だったようです。

会社法第423条(役員等の株式会社に対する損害賠償責任)に定められた負うべき責任を果たさなかったことによる責任を果たせと会社が民事訴訟をおこしたわけです。

このように、取締役は法的に強い業務執行の権限を持つと同時に委任元の会社が正当に利益を追求することができるよう、取締役として法的義務も果たさなければならない責任ある立場なのです。

また、取締役には、他の役員を監視し不適切な行為があれば自ら取締役会を招集して業務執行の適正化を図るという義務もあり、これを怠ることも善管注意義務の違反にあたります。

 

他人事にしてはいけない背任罪

背任罪とは

さらに、取締役が義務違反を行った場合には、刑事責任を負わなければならないものもあります。その代表的なものが「背任罪」です。

この背任罪がどういうものか見て行きましょう。

 

まず、背任罪の成立要件や罰則は刑法の247条に規定されています。

以下、条文です。

「他人のためにその事務を処理する者が、自己若しくは第三者の利益を図り又は本人に損害を加える目的で、その任務に背く行為をし、本人に財産上の損害を加えたときは、五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。」

引用元:http://elaws.e-gov.go.jp

趣旨としては、期待される行為をしない場合と、なすべきでない行為をする場合の両方があります

務にく行為」の行為例としては,以下のようなものが挙げられるでしょうか。

  • 銀行の役職員が資産も無い者に無担保で貸し付けを行う行為
  • 社外秘の情報を外部に漏らしてしまう行為
  • 架空取引で不当に利益を得る行為

メディアで似たようなニュースを聞いたことがあるかもしれません。

社外秘の情報を外部にもらしてしまう行為が背任罪に当たる可能性を否定できないと聞くと、営業パーソンの方も身を引き締めなければいけないと思うべきです。

なぜなら、営業部門関係者は日々営業活動の中で顧客から得た情報や顧客企業の現場で得た知見を元に、自社商品・サービスで問題解決に努め自社の売上に寄与しようと活動しているからです。

 


ゴーンが起訴された「特別背任罪」とは?

更に、「特別背任罪」とはどいういうものでしょうか?

その名の通り背任罪の特別版であり、その大きな違いは「行為者」です

特別背任罪は、会社であれば株式会社の発起人や取締役、銀行なら頭取など組織のトップやそれに近い地位にいる人を処罰の対象としています。

このような身分を有する人たちの背任行為は、一般社会に与える影響が大きいため、刑法所定の背任罪より重く処罰すべきとの考えから、会社法や保険業法の中で規定された重い罪とされます。

会社や株主に対する損害賠償責任という民事責任に加えて、特別背任罪として有罪が確定すれば刑事責任も果たさなければならないのです。

 

まとめ

今回は、カルロスゴーン氏のニュースを起点に働くものとして知っておくべき法律やその役割についてお話しました。

改めて、経済は人と人、あるいは人と法人との契約(取引)によって成り立っており、経済活動は、法人である会社の存続に直結する営みであることが良く分かります。

同時に、経済活動によって人あるいは法人が過度にあるいは不当に利益を得たり、損害を加えたり加えられたりすることがないよう監視することも必要となります。

その中で取締役は、常に負うべき義務があり万が一それに背くことをした場合には少なくとも損害を被った人や法人に対して民事責任を果たし、時には罰を受けて刑事責任も果たす必要があるのです。

 

人や法人が豊かな生活、健全な経営を持続できるようにするために民法、会社法そして刑法が存在すると考えれば、これら法律について知っておくことは人生を歩む上で意味のあることではないでしょうか。

 

今回も、最後まで読んで下さり有難うございます。

 

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