No.067 オンラインで本当に生産性の高いセールスはできるのか?
著者の知人の一人が、EUに所属する国に住んでいます。
何度か休暇にはその知人に会いに現地を訪ねましたが、そう度々行ける訳でもないので、最近は専らLINEで近況を共有しあうことが増えました。
リアルタイムで動画・音声でやり取りができるのであまり不都合は感じなくなりました。
一方、ビジネスに目を向けますと、海外企業や海外拠点との打ち合わせや外資系企業の場合国外の支店とのミーティングで、オンラインの会議システムが利用されています。
2000年に米系の企業に入社後、著者が初めてオンラインツールを利用したのは2000年代前半だったと記憶しています。
その当時は、国内ではまだまだ非面談形式での営業活動には強い抵抗があり社内会議としての利用が多く、せいぜい画面で資料を共有する程度でした。
その後、ネットワーク環境が劇的に向上し今やリアルタイム動画による海外が当たり前となりました。
それでも、19年末のとある調査では、欧米企業の営業組織の4割から5割が非訪問営業を導入しているのに対し、日本では1割強にとどまっているとの結果がでています。
今回は、非訪問営業に不可欠な「オンライン」ツールについてお話しします。
オンライン営業の現状
そもそも、オンラインツール活用の最大の理由はコスト、つまり出張や渡航費用の問題です。
そして、2番目の理由は、時間の有効活用です。
歴史的にも様々な技術が「距離の問題」を解決してきましたが、ITはその際たるものです。
ビジネスとも相性が良くその優れた効用は20世紀の大発明の一つと言われるゆえんです。
オンラインツールによる社内会議は、時差の問題を除けば非常に有効です。特に海外拠点と連携し速やかな意思決定をしなければならない場合にはオンライン会議ツールが不可欠です。
一方、営業活動上は、今やオンラインツールなしに業務を行うことはできない状況となっています。
この状況下では、従来の面談営業とオンライン営業の違いを理解し、面談営業と同等かそれ以上の効果・効率が出せる工夫を見出せるかどうかにかかってきます。
非対面では情報伝達は難しい
そもそも、ボディランゲージやを交えたコミュニケーションによる安心感や信頼感の付与、あるいは信頼関係の構築、醸成には障害になりうるオンラインツールです。
アメリカの心理学者アルバート・メラビアンによれば、態度、感情や意志を表現するコミュニケーションが相手にどう影響するかを見る時、言葉による(バーバル、verbal)つまり言語情報の伝達による影響と、非言語による(ノンバーバル、non-verbal)な情報伝達による影響があり、その影響度合いに統計的な違いがあることを実験で見出しました。
それによれば、「言語情報」が相手に与える影響の度合い、つまり伝えたいことが相手に伝わって相手の行動に影響を及ぼしている程度は、約7%だそうです。
これは、発言内容以外の知覚情報が聞き手の受け止め・理解に大きく影響していることを意味しています。
とりわけ日本は、他者に配慮する意識が強い社会特性のため、慮る、読み取る姿勢が重要でありその態度や能力が相手にとって安心感や誠意と受け取られる傾向にあります。
非対面の弱点を補うのに大事なポイント
営業の役割として特に重要なのは、効果的かつ効率よく顧客の課題を引き出せることです。
その前段として、顧客にとって注目に値するような情報提供や課題の深堀りによって解決したい重要課題を顕在化させる前段としてのイベントやわかりやすい資料提供が不可欠となります。
この事前ヒアリングの部分は、非面談でも十分対応できうる部分です。同時に、フォローの一環で電話をする際に、口頭では伝わりにくいものやデモが有効または必要なものについてはオンラインツールを活用すれば良いと思います。
どのようなコミュニケーション手段が好ましいかも顧客に確認することも忘れずに。
次に、オンライン商談の段階では、事前ヒアリングの段階でオンライン商談時の目的(アジェンダ)が具体的かつ明確になった状態で行われるように手筈を整えます。
この段階で重要になるのは、目的や課題感の有無の確認、協議内容の理解度の確認、そして次のステップに進もうという意思・意向の確認をするための作業であり、そのための事前準備です。
特に工夫する点としては、限定的・選択的なクローズドクエスチョンを投げかけることで、意思や理解度を把握することが挙げられます。
オンライン商談でこれら確認作業を実施することで、コミュニケーションの漏れやそれに伴う認識のズレを残すことなく目的を果たすことができるはずです。
この点については、以下の記事で的確に解説されていると感じたのでご参考ください。
参考Mtame, inc橋口様の記事:オンラインセールスで相手の温度感を確かめるために行っていること
まとめ
今回は、オンラインで生産性を落とさずに営業ができるのか?についてお話ししました。
これまでの営業活動と大きく異なることをするのではなく、より細やかに認識のズレや理解度合を確認しながら面談を進める工夫とその準備(投げかけるポイントやそれに関する質問文のスクリプト化)が生産性を左右するとお話ししました。
その意味では、オンラインツールはオプションとして有効活用する手段と考えた方が良いかもしれません。
今回も、最後までお読み下さり有難うございます。