No.066 業務請負契約と業務委任契約

学生時代、体育会系テニス部に所属していたこともあり、今でもプロのテニス大会や試合結果をネットで追いかけています。

最近ですと、女子テニスの大阪なおみ選手が活躍する中日本でも、なぜかコーチにもメディアが注目することがあります。

コーチといっても色々なタイプがいて、プロ選手と彼らとの契約に関するニュースもよく見かけますが、どのような契約をしているのか気になります。

もちろん、厳しいプロの世界ですから、グランドスラム問われる世界4大大会のタイトルを獲るだとか勝率を向上させるといた成果の達成を持ってコーチとして評価されていて長期的に契約更新していくこともままならないのではと勝手ながら推察しています。

 

さて、今回は請負契約と委任契約の違いについてお話しします。

 

業務委託契約とは

「業務を委託する」とは、個人または企業が自社外の人や機関に事務・取引・業務など社内の一部または部門業務のすべてを頼んでまかせることです。

実務上は、委託元の企業と委託先のフリーランスや代行業者との間で業務委託契約について協議されその名称で締結することが多いようです。

ただ、厳密には「業務委託契約」といいう名前の契約は法的には存在しません。民法では、「業務委託契約」は「請負契約」と「委任契約」の2種類の契約として規定されています。

ここではその2つの契約の内容を具体的に説明します。

 

請負契約とは

民法では、請負契約とは、「当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。」と規定されています。(民法632条)

つまり、請負い契約は、業務を完成させたことによって生まれた成果物を得ることを目的とした契約です。

例えば、以下のようなケースが当てはまります。

  • 企業が、Webデザイナーにランディングページの制作を依頼する
  • 県庁が、SIerに労務管理システムの開発を依頼する
  • ベンチャー企業が、営業代行業者にテレアポ業務を依頼する
  • 企業が、フリーランスに経営戦略について顧問指導を依頼する

依頼内容と成果物に対する報酬額、納期などを含めた請負契約を結びます。

業務途中のままになったり、業務は完了したが成果物として認められない場合には、受託者は報酬を得ることができません。

上記ランディングページの例で言えば、完成品が依頼内容通りではなかった場合には、Webデザイナーは修正作業を行い、依頼に沿う納品を行うことになります。

また、テレアポ業務の例で申せば、月末までに面談確約数を10件獲得するという契約だった場合には、10件獲得が出来なければ対価は発生しません。

 

委任契約とは

一方、委任契約は、民法では「当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる契約」と規定されております。(民法643条)

つまり委任契約は、弁護士などに法律行為を委託する場合の言葉です。法律行為以外のことを委託する場合には「準委任契約」という名称になります。

委任契約は、業務の遂行を目的としたものです。請負契約と異なり業務を行いさえすれば仕事の完成義務は負わず成果物がなくても対価が発生します。

例えば、以下のようなケースが当てはまります。

  • 企業が、企業に新人教育の研修講師を依頼する
  • 企業が、フリーランスに経営に関するコンサルティングを依頼する
  • ベンチャー企業が、個人に人事・総務業務に関する事務処理を依頼する
  • ベンチャー企業が、個人に専門的な技術の指導を依頼する

新人教育の例で言えば、講師は依頼内容通りに実施すれば契約を履行したことなります。研修後に新人が学んだことを実務に活かして成果を上げているかどうかに関わらず報酬は受けとれます。

経営コンサルティングのケースで考えますと、採用戦略に関する課題の抽出や見直し案のアイデア出しをした場合、計画した採用職種や人員数の目標達成の可否を問わず報酬を得ることができます。

 

まとめ

今回は、一般的によく知られる業務委託契約についてお話ししました。

法的には、民法で「請負契約」と「委任契約」の2種類の契約が規定されており、それぞれ仕事の完成、つまり成果物の提供義務を負うかどうかで使い分けることをお話ししました。

実態としては、業務内容が仕様書として厳密かつ詳細に定義・記述されておらず、2種の混合した契約内容になっていることが少なくないようです。

 

業務委託を検討される際は、契約名称よりは、出来る限り仕様書や仕事の完成、あるいは成果物の定義についてよく協議し契約者双方が思わぬ不利益を被らないように決めておくことが重要になることは言うまでもありません。

 

今回も、最後までお読み下さり有難うございます。

 

 

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