No.054 M-1王者ミルクボーイがBtoC営業をやっても成果を出せるのか?
時の人、漫才コンビミルクボーイ。
「どんな特徴言うてたか詳しく教えてくれるー?」
「ほなもうちょっと言うてみてよ。」
こんなセリフを言って、次から次へと相方から情報を引き出します。
最終的には相方が欲しい答えが出るどころか、「そんなわけないやろ!」という相方へのツッコミでネタは終了します。
もっとも、相方のニーズの深堀には相方自身の大ボケで失敗するというシナリオだから答えにたどり着かなくても問題はありません。
リアルな営業の面談の場では、「そんなわけないやろ!」というツッコミが入ることはまずありません。ただ、顧客が「この営業はなにしにきたんや。。」と心の中でツッコミを入れているような面談にはなっていないと100%言えるでしょうか?
「そんなことあるわけないやろ!」と120%自信を持って著者につっこめる営業パーソンならば、以降を読む必要はない。是非、より大事なことに時間を費やして頂きたいと思います。
過去半年を振り返ってみて、ちょっとでも「う。。」となるか、あるいは「ないこともないな」と思った営業パーソンがいたら、その方はとても正直であり好感が持てますね。
是非この機会に自分の営業活動を整理する意味で以降を読んでみてください。
顧客は、ニーズを「常に」把握しているのか?
さて、顧客であればニーズを「常に」把握しているのでしょうか?
この問いに対する著者の考えは、主に2つの理由で「NO」です。
1つ目は、きちんと本質的なニーズにたどり着くことができないほど重要かつ緊急度の高い業務で忙しい、あるいはしっかり整理する余裕がないから。
そして2つ目は、日本の「恥の文化」にも通じますが、問題があるということ自体を赤の他人に知られたくないという防御の心理が働いているから。
1つ目の理由から見てみましょう。
顧客自身が解決したい問題が、面談をする目の前の顧客だけのものであればその限りではありません。
ですが、多くの場合面談者の所属する部門や事業部など組織的な問題として認識しているかどうかが重要です。
その問題に関与する複数の関係者其々の立場の人が持つ目的や目標が異なる中で、顧客自身も含めて組織で共有された課題として認識するには困難が伴うことは容易に予想できます。
まさに、このことが物事が前に進みにくい大きな要因です。
窓口である面談者が、この困難を乗り越えて調整やヒアリングを重ねて組織の代表として課題を把握するために、自分の業務以外に費やす時間や労力は計り知れません。
次に2つ目の理由。
そもそも「問題」があることを易々と赤の他人に知らせることはしません。
これは、プライベートの人間関係でもそうです。
また、「問題」をどのように捉えるのか、直面する人の生きる姿勢に大きく左右される面もあります。
1つ目の理由と関連しますが、その問題解決に対する本気度や覚悟の程度もパラメータの一つです。
いずれにしても、過去に営業パーソンが所属する企業との取引があり成功体験でもない限りは、ちょっと聞いたら教えてくれるということは稀でしょう。
過去の経験と良い成果を整理する癖をつける
そのような状況を想定できるとすれば、営業パーソンとしては大事な「準備」が必要になります。
No.035?でも書きましたが、顧客の心の壁を乗り越えていくためにはいくつか方法はありますが、決して手段として外してはいけないことは「自分自身は何ができるのか?」を明快に分かりやすく説明できるようにしておくことです。
これは、言わば営業パーソンとして、人間としての武器であり魅力そのもの。
顧客にとっては、どのように役にたってくれるのか?を判断する材料になります。
この準備は、おいそれと浮かんでくるものではなく、日々自分の思考の癖や行動の見直しを継続しながら表現を洗練させる、あるいは刷新していく作業といえます。
営業活動の9割は成約にまでたどり着かない案件と言われますが、学ぶべきことが必ずあります。そこから、次からは同じ過ちを繰り返さない、より効果的に障害を回避するスキルを身に付けるなどにより自分の中に「静かな自信」を身に纏うことが必ずや役に立ちます。
そして、成約した案件からは、顧客と二人三脚で歩みつつうまくいったと確認できる行動や判断はあったはずです。また、中には初めて試みたこともあったと思います。その振り返りの積み重ねから、自分の中に「問題解決のスペシャリストという自負」を潜ませていくことも、お客様から「信用」を得るのに役立ちます。
著者の経験上も、色々な企業において成功案件の経緯の部門内あるいは社員全体に共有されることは多い印象です。もちろん、会社全体を鼓舞する手段の一つとしていくらか効果はあります。
ですが、営業パーソン自身そして営業部門としては失敗を繰り返さない、つまり失注リスクをいかに減らすかという側面にフォーカスしておくことも同じくらい大切なことのはずです。
職業柄場数をこなすのが営業パーソンであることは、冒頭のミルクボーイも同じです。
場数をこなせる機会があるのであれば、うまくいかないことを恐れずしっかり準備をしたうえで試行錯誤を繰り返しましょう。
その「挑戦」と「振り返り」が、必ずや自分自身の自信や自負、つまり「自分はどう顧客の役に立てるのか?」という問いに明確にこたえられるようになるはずです。
ミルクボーイは、おそらくこの「挑戦」と「振り返り」を数多繰り返し続けたからたどり着いたスタイルが今私たちがテレビで見ているもののはずです。
そしてまた、そのスタイルもどこまで通用するのかを今自分達自身で問うているのではないでしょうか。
共に解決に向けて顧客と歩む姿勢を持つ
自分がどう役に立てるかが見えたところで、営業パーソンにとってもう一つ必要なことがあります。
それは、顧客と同じ目線に立とうとすること。
一緒に課題を浮き彫りにすることも含めて解決策の模索に向けて寄り添う姿勢。
確かに言うは易しですが、何をすればそう感じてもらえるかに王道はないに思います。
それでもいくつか心がけるべきことはあります。3つほどあげてみましょう。
- 企業あるは事業の方針や目標との整合を意識する
- 利害関係者を想定し、顧客と一緒に各関係者への対応を考える
- 自社以外も含め顧客課題を解決できないかを検討する
まず、1つ目の心がけは、立場の異なる利害関係者の最大公約数を見出すには大きな視座の定性的な方針や定量的な目標と紐づけることを意識しておくと、質問の仕方も変わってきます。
「その課題は、部門全体のどの方針と整合しそうですか?」
「その問題が仮に解決されるとすれば、どの程度事業方針に寄与しますでしょうか?」
「なるほど。その問題は放置しておくと、事業目標に少なからず影響を与える可能性がありそうですが如何ですか?」
次の2つ目の心がけは1つ目と関連していて、利害関係者が浮き彫りになりかつその方への対処を考えることができます。
「その問題意識は、どのレベルまで共有されていますでしょうか?」
「その問題に対処していくには、部長はもとよりエンドユーザである▲▲部門の意見や課題感も把握しておく必要がありそうですが、どう思われますか?」
最後に、3つ目の心がけ。
やはり企業に勤めるの営業パーソンであれば、当然自社製品・サービスを売ってなんぼですからやむをえません。
ただ、激しい競争になる案件もありますので、日ごろから競合情報を事前に社内で収集することは必須ですし、顧客企業の社内リソースが競合対象になる場合も少なくないのでその対処も想定する必要があります(著者の経験上頻度が高いと感じています)。
そして案件によっては、競合に比べて自社が決定的に不利になったり、競合も含めていずれの選択肢も帯に短したすきに長しのことも考えられます。
そういう時に自社以外の選択肢やより統合的なソリューションこそお客様のニーズに応えられる可能性に引導を渡せる視野を持てるかも意識することも大切なことです。
お話しした3つの心がけは、いずれも面談に向けた「準備」そのものでもあります。つまり、必要な質問事項もクリアになり、よりピンポイントな面談の成果を掲げて面談を迎えることが出来るようになるはずです。
まとめ
今回は、芸人ミルクボーイでも営業で成果を出せるのか?という問いを立てて話を進めました。
顧客のニーズを把握することは、ミルクボーイのようにスムーズにヒアリングができる分けではないとお話ししました。
寧ろ、顧客自身でさえ解決すべき企業の課題を的確に把握すること自体が難しいこと、また、だからこそ営業パーソンの存在価値を出せる機会があることをお話ししました。
そのためにも、自分自身がどのようにお役に立てるのかを明確にし顧客に認識してもらうことが必要だとお話ししました。
そして、顧客と同じ目線に立って課題の浮き彫りそしてどうすれば解決に結びつくのかを一緒に考える姿勢が大切であることをお話ししました。
そのような姿勢を表すために少なくとも3つの心掛けがあることをお話ししました。
3つの心掛けの実践は、面談のための周到な準備そのものでもあることもお話ししました。
今回も、最後までお読み下さり有難うございます。