No.028 いかに潜在顧客から見込顧客を生み出すか?

なかなか潜在顧客の育成(ナーチャリング)がうまくいかず見込顧客の創出ができないことに悩んでいませんか?

この記事では、この悩みを解決する方法についてお伝えいたします。

マーケティングと販売の役割の違い

初めに、顧客の購買行動と販売プロセスを理解するためにマーケティングと営業の機能・職能の役割が、米国と日本では異なることをお話ししておきます。

まず、「営業」という英語は存在しないようです。

米国におけるマーケティングと販売

米国では、マーケティング(Marketing、マーケティング)と販売(Sales、セールス)は別組織で機能(職能)を明確に分けています。

以下に示すように、基本的にマインドセットが異なっておりお互いに対立する部門の位置づけとなっています。また、力関係の点では、マーケティング部門がより力を持つ企業が多いのも特徴です。

マーケティング・・・戦略的、長期的、製品軸思考

販売・・・・・・・・短期的、顧客志向、信頼関係思考

(参照:「日本における営業とMarketing & Sales との関係」、木下真次、佐藤善信 著)

日本におけるマーケティングと販売

一方、日本では米国とは異なりマーケティングと販売の区別は曖昧です。

また、日本で営業と言えばもっと広い意味をもちます。

つまり、マーケティングおよび販売は、営業の一部であり、営業にはそれ以外の役割・職能が含まれます。

特徴的なものが「社内調整」と言われています。

日本では、社長自らも自社の商品・サービスを売るたべく社内調整のために動くことがあります。

日本における販売の発祥

職業としての営業担当者の原型は卸売業(Wholesaler、ホールセラー)と小売業(Retailer、リテーラー)にあると言われています。

「卸売業」は、元々平安・鎌倉時代から年貢米を運搬する役割を持っていた「問丸(といまる)」が、荘園領主や大名の要望を受けて販売も行うように業務拡大し、後に運送を分化して「問屋(とんや)」という組織に転じたとされています。
 ※問丸(といまる)・・・水上輸送・倉庫業者、のちに販売も含んだ業者
 ※馬借(ばしゃく)・・・馬を利用した陸上輸送業者。平安時代から戦国時代にかけて活躍。

一方、「小売業」は、「富山の薬売り」などで知られる行商、すなわち商品を携えて最終消費者のために各地を売り歩く(販売する)人が発祥と言われています。

日本における営業とは?

言葉としても、「(事)業を営むこと」が営業であるのに対して「商品・サービスを売ること」が販売であることからも明らかです。

また、日本企業にはマーケティング部門の定着が米国等と比べて遅れていることもあり、「売る仕組み」を始めとするマーケティング部門の業務が販売部門を中心に機能分散していて、営業部門が販売以外の機能を持つ要因にもなっているようです。

販売以外で営業が担う役割には、顧客との人間関係構築・維持活動、他部署や部門との調整、売れるしくみの立案・実施・統括といったことが挙げられます。

 

営業の業務範囲が曖昧であることが見込み顧客創出を困難にしている要因

前述のように、日本では特に「営業」の意味合いが広く、また個々や部門の経験値によって「営業」業務の解釈が変わる機能・職能であることに起因して、営業部門の機能、しいては販売プロセスとそれに関わる営業活動に対する理解があいまいなままになっているケースは少なくありません。そのため、営業パーソンは名刺情報から案件のありそうな顧客を絞り込んで見込顧客を見出すべく手探りで需要(Demand, デマンド)を探る活動をせざるを得ない状況です。

業務時間配分の問題

また、文字通り営業は販売以外の業も担っていることから、業務配分として潜在顧客の需要を喚起する活動に時間が掛けられない場合もあります。

スキルとツールの活用不足

更には、需要喚起には営業パーソンのスキル(No.24No.25No.26の記事)不足、あるいはそのためのホワイトペーパーや同業他社の事例が不足していることが、潜在顧客の関心を引くことに繋がらないこともあります。

 

販売プロセスとは

上記のような営業活動の課題を議論する上で、買い手の購買そして売り手の販売プロセスに直接的にかかわる営業活動にフォーカスしてお話しする必要があります。

そこで、曖昧さを無くし議論を分かりやすくするために以下に販売プロセスとその過程での営業活動内容と成果を記載しておきます。

   活動内容         成果

1)新規顧客獲得活動 ⇒ 潜在顧客(Lead、リード)の獲得

2)潜在顧客育成活動 ⇒ 見込顧客(Prospect、プロスペクト)の獲得

3)案件顕在化活動  ⇒ 案件(Opportunity、オポチュニティ)の創出

4)購入誘導活動   ⇒ 案件の成約 ≒ 売上

 

組織・チームの目的を明確化することが大事

如何に見込顧客を獲得するかというテーマを考える上でも、上記に述べた販売プロセスを踏まえて機能に応じた部門やチームを組織し、業務の目的・目標を明確にすることが前提となります。
同時に、変化に対応するべく各組織や担当者の機能・職能を1年に一度は見直す事も必要です。

 

販売活動の効率化が潜在顧客を生む

その上で、これら部門および営業パーソンの機能・職能が販売プロセスとどうリンクするのか理解して、見込顧客に遷移したかどうかを判断する基準を決めておきましょう。

これらをベースに、見込顧客に対する活動結果を評価して部門内で共有し有効だったアプローチやツール、資料を組織的に転用していくことが望ましいでしょう。

効果のあるツールや資料を作成した担当者には、なんらかの報奨・表彰する仕掛けもあると良いと思います。

これらの取組みが成果を出すためには、営業パーソンに目を配らせるマネージャやスーパバイザの存在が不可欠となります。

なぜなら、組織的に効率よく成果を出す上では、個々人の適性、スキル、時間配分、得手不得手による人員再配置も見極めてリソースを有効に活用することが鍵となるからです。

また、往々にして個々の努力の成果で得たものが他者に安易に活用されてしまうことを望まず、不快感もあいまって他者に共有されずに埋もれてしまうことも少なくありません。

目を配る立場の人が、個々の特性、その人らしさに真摯に目を向け自主的にチームに協力したいと思える方向に導く能力が強く求められます。

このようなスーパバイザの存在は、インサイドセールスチームの導入、MA(マーケティングオートメーション)の採用、販売促進業務やノンコア業務の代行委託などの選択肢を含めた営業組織の進化とそれによる更なる売上への寄与にもつながるはずです。

 

まとめ

今回は、なかなか潜在顧客の育成(ナーチャリング)がうまくいかず見込顧客の創出ができないという悩みを取り上げました。

この悩みの対策として、販売プロセスを踏まえた組織作りと職能・業務分担をする必要があることをお話ししました。

また、中長期的な対応として、個々の営業パーソンに目を配り個々の能力を見極め組織全体でノウハウを共有し効率化を図り、また適材適所の配置ができるスーパバイザを確保することが重要であることをお話ししました。

 

今回も、最後まで読んで下さり有難うございます。

 

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