No.065 案件が価格競争になる前にすべき3つのポイント – 本編3

前々回から3回に分けて3つのポイントをお話しています。

  1. 仕様要件の漏らさず把握
  2. 仕様要件の精度
  3. 仕様要件の優先度

本シリーズ最後となる今回は、「3.仕様要件の優先度」についてです。

 

絶対に譲れない要件がそこにはある

これまでの2回に掛けて、「購入を決定する要件」を①漏らさずかつ②高い精度で把握することの重要性、そしてそれらが競争を引き起こしにくい要因であるとお話しました。

現実の世界では、これら2つのポイントで購入を決定する要件を把握できたとしても、すべての要件を完璧に満たすソリューションはまず存在しません。

仮にそのようなソリューションを提供できたとしても、必ずやコストや納期など時間的な問題に直面するでしょう。

それでも、顧客にとっては最大限の成果を引き出すために投資対効果に対する要件毎の寄与度を勘案して優先順位をつけています。

 

提案側がこの要件の優先度を見誤ることは競争する上で致命的です。

ですから、

「導入するソリューションを比較検討する上で、どのような要件に最も注目していますでしょうか?」

のように、まずは本丸である絶対譲れない要件を把握することが肝要です。

 

要件は「聞き出す」+「導く」を心がけよ

要件の優先順位は、窓口である担当者と決裁権者では認識が異なる場合も十分にありえますので、その認識にズレがあるかどうかを確かめることも不可欠です。

窓口担当者の方以外で意思決定に関わる立場の方にお会いするには段取りもありおいそれとお会いすることはできません。

一方、売り手にとっては、他社では解決策がないかあっても自社の方が圧倒的な効果を発揮できる要件が存在することはなかなかありません。

例えば、

「『メンテナンスコスト』と『ツール連携の豊富さ』はどちらも重要な要件と伺いましたが、どちらを優先的に考えますか?」

「メンテナンスコストに目をつぶってでも、豊富なツール連携の選択肢がある方を優先しますか?」

のように選択的なクローズドクエスチョンで優先度を把握しましょう。

 

また、自社のソリューションの核となる訴求点が他にある場合には、

「『メンテナンスコスト』と『ツール連携の豊富さ』はどちらも重要な要件と伺いましたが、そのほかについては如何でしょうか?最近のトレンドであるESG経営が注目されるようになり、『データトレーサビリティ』についても特に御社では問題意識が高いのではと思うのですが?」

といった問いかけをして、自社に優位になるような要件の優先度を高めるよう導く工夫も必要です。

 

 

まとめ

今回は、「3.仕様要件の優先度」についてお話ししました。

企業としては、いくらかの制約の中で最も成果を生み出すソリューションを選択しなければならないことから、購入を決定する要件についても優先順位をつけて買い手の共通認識にしておく必要があることをお話ししました。

一方、ソリューションを提供する側の売り手も買い手が持つ購入決定する要件の優先順位を的確に認識することで競争を優位に運ばねばならないとお話ししました。

場合により、顧客が気づいていない、あるいは優先度が低いと認識している要件も自社にとって最重要な訴求点となる要件であれば、ピンポイントな質問や説得によってその要件の優先度を高めることで競争にならない状況を作る取組みも辞してはならないこともお話ししました。

 

以上、過去3回に渡って案件を競争にならないようにするにはどうするか3つのポイントをお話ししてきました。

購入を決定する要件を議論する上では、根拠のある「自信」が必要だと感じています。

そのためにも、自社内で情報・知恵を結集し、顧客になぜその要件を重要視する必要があるのかをより納得感を持ってもらう準備が大切です。

また、新聞や記事あるいは顧客との会話を通して、顧客の事業、商品やサービスに関連する情報や変化の兆しを掴み、その変化への対応・適応のために企業がどのような対応を求められるのか、つまり潜在的にどのような課題として浮き彫りになるのかを想像する訓練を毎日すると、顧客に先駆けて問題提起ができるようになるはずです。

人間もビジネスも、変化に如何に速やかに適応するかが、生き残れるかどうかを分けるものだというのはよく言われることですから。

 

今回も、最後までお読み下さり有難うございます。

 

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