No.055 それでもテレアポはした方がよいのか?

先日、久しぶりに愛読漫画の一つ、コミック版「風の谷のナウシカ」の解説コンテンツに触れる機会がありました。

この漫画の主人公はタイトルにある「ナウシカ」という女性。

およそ1000年後の地球は、環境破壊が著しく進み大気は変異した植物が発する毒ガスで充満しており人類は異常に進化・巨大化した昆虫達(この漫画では昆虫を蟲[むし]と呼ぶ)に怯えながら細々と生きている設定のお話しです。

そんな中でも、ナウシカは、生けとし生ける物を愛でるほど慈愛にあふれ、蟲達とさえも「会話」ができる特異な存在として描かれています。

一方、平安時代に作られた作者未詳の「堤中納言物語」という短編小説集の主人公の一人に、「虫愛づる姫君」というこれまた当時の常識からすると大分異端な女性が登場します。

この「虫愛づる姫君」が、実は「ナウシカ」のモデルの一人だと聞いてびっくり。

同時に、この国の足元にはまだまだ気づいていない文化や歴史の宝箱が眠っていて、その蓋が開かれるのを待っていると知り、著者の知的好奇心はしばらく絶えることはないと安心した日となりました。

 

さて、今回は、テレアポは効率がよいのか?という問いを顧客との会話やパートナーと仕事をする中で話題に上がるので取り上げました。

 

ネット時代の今でもテレアポは必要?

「テレアポ」とは、テレフォン・アポイントメント(Telephone Appointment)、電話による面談予約という意味の和製英語の略です。

特に新規顧客開拓のアプローチの一つとして、古くから使われている手法です。

企業の成長のためには、既存顧客からのリピートによる収益確保だけではなく、同時に新規の顧客も開拓して収益の一部を担うことが不可欠です。

また、リスクの分散の観点からも、不測の事態が起こり既存顧客とのビジネスが滞ってしまうような事業リスクを想定して、新規顧客を開拓することは非常に重要な事業活動の一つです。

一方、近年は顧客自身が解決すべき課題に取り組む上でITの発達の恩恵を受けており自分達で課題解決に必要な情報や知見もかなり収集しています。

そのため、営業パーソンの存在価値が相対的に下がり、営業パーソンによる新規顧客開拓はますます敷居の高い営業活動の一つになっています。

このような状況を打開すべく、IT技術を用いて知り得た顧客企業や担当者の情報を最大限活用し、顧客ニーズの解決にピンポイントで寄与できることを訴求して自社に興味を持ってもらい、リーズの獲得や面談予約を自動化し効率向上を図るサービスも多く出現しています。

大企業向けが中心に、こういった機械学習や深層学習の機能を活かしたサービスを活用し新規顧客開拓を効率化する取り組みが進んでいます。

あるいは、インサイドセールス(内勤営業)に新規顧客開拓やホットリードの醸成を担ってもらうことで外勤の営業パーソンはクロージングに注力してもらうような組織作りも採用され始めています。

とはいえ、多くの企業で上記に述べた大きな変革には様子見をしており、営業パーソンにはまだまだ従来からのやり方を踏襲しつつより知恵を絞って改良してなんとか新規顧客を獲得することが求められます。

また、テレアポは、DM営業やメール営業などのテキストベースのコミュニケーションと異なり、直接目は合わせませんが音声によるコミュニケーションがあるので、顧客の反応を確認しながら会話の展開を対応できる点で大切なアプローチの一つといえます。

 

テレアポのコツ

テレアポは、新規顧客開拓のアプローチとして大切な手段の一つですが、営業パーソンにとっては苦手意識のある方法としても知られています。

主な理由は、むげに断られる頻度が高いこと、その中には非常に冷やかな態度であるいは怒りを丸出しでガチャン!と電話を話の途中で切られた体験を持っている人も少なくないからでしょう。

人間ですから、こんな対応をされたら気持ちが滅入ってしまうことは十分に想像できます。(著者ももちろん経験者の一人です。。)

それでも、成果を出さねばならないのが営業パーソン。ごまかしの聞きにくい職務ですので、覚悟してやるしかないのです。

ただ、どうせやるなら見える成果を出せるよう工夫した方がよいに決まっています。そのための重要な考え方を2つご紹介します。

 

テレアポは断られることが多くて当たり前

まずは、「心構え」。

テレアポの目的は、名前の通り面談を確約するすことですので、その目的が達せられない場合でも「次、次!」と気持ちを切り替えられれば良いわけです。

とはいえ、という方にとってはこのように考えてみてはどうでしょうか。

「『成果』ではなく『行動』を基準に自分の頑張りを褒めてあげよう」

と。

つまり、面談予約獲得数やその率ではなく、例えば「今日は50件」と架電する数を目標に変えるのです。そうすれば達成したかどうかが明らかに分かり、それを自信にすることができます。

個人的には、例えば同僚と協力してお互い目標を共有し達成度に合わせて褒め合ったり、ご褒美を掛けて勝負するなど「ゲーム」化して心理的負担を軽減するくらいのことをしても良いと考えています。

決してやらない理由を並べてわざわざ上司から評価を下げるようなことはやめましょう。

 

RPGゲームをクリアするつもりで攻略方法をしっかりと練る

次は、テレアポの「攻略テクニック」。

テレアポ攻略については、あちらこちらで記事やブログで解説があるようなので、ここでは著者が考える大事なことをお話しします。

まず、事前準備として、以下の2つは実施しましょう。

 ①面談を獲得したいターゲット顧客を想定し、肩書と氏名を取得する
 ②ターゲット顧客によって、課題解決の成果の表現を想定する

①については、ネットで検索するほか、会社案内、有価証券報告書あるいは採用ページなどに目を通して氏名情報を得ましょう。

そして、②については、文字通りターゲット顧客により実務重視の課題感を話題にするか、経営目線、事業方針目線で課題に触れた方が良いかを見極めましょう。

その上で、実際に電話をする際には2つのステージをどう攻略するかを考える必要があります。

 ①受付窓口の突破
 ②ターゲット顧客とのアポ確約

まず、①受付窓口の突破について。

これは、シンプルにキーパーソンを氏名で呼び出しをすることが大事です。

「〇〇〇(社名)の伊藤と申します。▲▲▲様はいらっしゃいますでしょうか?」

注意したいのは、「お世話になっております」とは言わないことです。仮に繋いで頂いた場合、初めてお話しする相手であり、これまでお世話になっておりませんから。

受付窓口の方から「どのようなご用件でしょうか?」と尋ねられることも少なくありません。

その際は、準備しておいた課題解決や成果につながる点を踏まえて、

「。。。▲▲▲様のお役に立てるのではと思い資料をご持参したくご連絡させて頂きました。」

この際、決め手となるキーワードを交えてトークスクリプトを組み立てる工夫をしましょう。そうすれば、受付窓口の方が良く話分からならない内容だ、自分では判断しかねると考え担当者に繋いで頂く確率が上がるはずです。

あるいは、ニュースリリース、セミナー、講演あるいは記事等での事業に関する発言や主張を踏まえて、

「●●についてお伺いしたいことがありまして~」

といった枕詞で担当者に繋いでもらう方法もあります。

これは、自社に質問やフィードバックがある人からの電話だと判断し、ターゲット顧客に繋いで頂ける可能性があります。


 
次に、②ターゲット顧客とのアポ確約について。

これについても、色々と工夫は考えられますがここでは3つに絞ってお話しします。

1)短時間のやりとりであることを宣言する
「2,3分お時間よろしいでしょうか?」

最大でも5分以内と宣言しておけば、それくらいならと聞いていただける可能性があります。

5分も厳しいとの反応なら、1分だけと改めて前置きしてすぐに電話した目的の説明に移りましょう。


2)冒頭に要点・目的を30文字以内で簡潔に説明する

「〇〇様がご担当のDX事業のユーザ企業様も気づいていない潜在的な課題の解決で事業収益を大幅に改善できるというお話しは、〇〇様にお役に立てるのではと思い資料をご持参して直接ご説明させて頂きたいのですが。。。」

のように、耳よりな役立ち情報や資料をご提供したいという趣旨を簡潔にお伝えしましょう。

少しでも興味がありそうであれば、例えば

「。。。ありがとうございます。丁度、来週の●日の火曜、■日の木曜は貴社近くで元々訪問のお約束が入っておりますので、お立ち寄り致します。午前、午後であればどちらのご都合がよろしいでしょうか?」

と具体的かつ選択肢を絞って選んでもらうよう面談の予約を試みます。

「時間がないな」「忙しいね」と言われたら、次に手が開いて面談時間が取れる時期を確認しましょう。

あるいは、「とりあえず資料送っておいてよ」と言われるかもしれません。その場合は、メールアドレスを獲得できるわけですから、先ずは大きな収穫と自分を褒めてください。その上で、関連資料をお送りしお伝えしていたように数日後に電話でフォローを入れましょう。

 

3)時には潔く引く

「別に取り組まなきゃいけない課題がある」とか「そういう課題には直面していないねえ」と言われた場合、仮に自社だけでは解決できないかもしれませんが「それはどのような課題か、差し支えなければお伺いしてもよろしいでしょうか?」と聞いておくことが大事です。

「一度検討してご連絡致しますので、その際のご連絡先をお伺いできますか?」とお伝えし、少なくとも直通電話番号又はメールアドレスを獲得しましょう。

一方、「今はそういった問題に取り組んでいる場合ではない」となった際は、ひとまず引きましょう。別の立場のターゲットを捜した方がよいでしょう。

 

その他にも、声のトーンや話すスピード、電話を掛ける時間帯、敬語の問題など受電する側の立場を踏まえた工夫が様々ございますが、ここでは触れません。皆様自身で調べるなり試行錯誤してみてください。

 

先日記事にした飛び込み営業でも書きましたが、如何に準備をするかが成功を左右する点は共通していますし、その準備によって得た情報やトークスクリプトはテレアポ以外でも確実に役立つ内容のはずです。

例えば、既存顧客の担当者から上長や他部門の潜在顧客を紹介してもらうといった時にも有効活用できるはずです。

また、苦手意識も数をこなすことで慣れてくると薄れていくものです。

 

お金を増やすために投資信託や株を始めて見るのと似ています。

まずは、基本的なルールを学び小さく実践してみる。時には、痛い目に合う、ブルーな気分になることもあります。そこから何かを学び取って同じ過ちを繰り返さない様に改善策を打つ。この繰り返しです。

もっと言えば、自分の人生だって同じようなもののはずです。直面した問題にどう立ち向かうか、その姿勢はそのまま営業パーソンとして職務を果たす上で問題に対峙した時の姿勢そのものになりうることを認識するべきです。

逆に、1件、2件でも面談に持ち込めたのであれば大きな進歩です。自信にはならないとしても、誇りに思って良いと思います。

 

「心から、あなたを誇りに思います。」

 

まとめ

今回は、それでもテレアポをした方がよいのか?というタイトルでお話ししました。

ITの発達により、顧客の情報収集能力が上がり同時に会社として営業電話は断る方針が強まっているという営業パーソンとしては不利な状況に置かれる面があることをお話ししました。

それでも、飛び込み営業やテレアポは新規顧客開拓の重要な手段として取り組まねばならない会社もまだまだ多く存在しています。

であるならば、どう工夫すれば苦手意識を和らげつつ、あるいは克服してテレアポに取り組むのかを考えた方が生産的であり自分の成長にも繋がるはずだとお話ししました。

これは、「ビジネスライクさの獲得」 = 「目的達成の徹底のためのメンタルの鍛錬」ではないでしょうか。

言い換えれば、困難な課題に直面した時に「やる気」や「気持ち」ではなく「行動」を基準に評価して自分を認め、自信をつける訓練と考えて取り組めるかどうかが試されており、その経験値はその後のキャリアにも大きな意味を持つはずです。

是非、一人で悩まずに仲間と共に「テレアポ」という課題に立ち向かっていきましょう。

 

今回も、最後までお読み下さり有難うございます。

 

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