No.039 宇宙ビジネスにこそ必要不可欠な法律の知識

宇宙ビジネスを始めるうえで必要なモノ・コトと言えば、他のビジネス同様に以下の4つに集約されるでしょうか。

  • モノ・アイデア
  • お金
  • 法律(ルール)

なかでも、4つ目の法律は、最近の投稿記事でも書きましたが、所属する社会で経済活動を行う上では、必ずルールに基づくことが求められます。

そこで、今回は、宇宙ビジネスに関して営業パーソンとして押さえておかなければならない法律についてお話しします。

 

いつものように、宇宙ビジネスにまつわる法律についてお話しする前に、日本の航空機宇宙開発の歴史・時代背景について少しお話ししておきましょう。

 

航空機開発の歴史

紀元前4世紀には人類が初めて空を飛ぼうとした言われています。

それから2100年あまり後、日本で初めて国産の有人の動力飛行が成功したのが1911年でした。(因みに、ライト兄弟による初飛行はその8年前の1903年。)

これを機に、資源を求めてアジア地域で植民地化を積極的に進めていた欧米列強国に攻め込まれないよう軍事力を含む国力を増強する中で、戦闘機、偵察機の開発も進められました。

中でも第2次大戦の戦時に開発された、海軍の「三菱零式艦上戦闘機(ゼロ戦)」、そして陸軍の「中島一式戦闘機 隼」は、代表的な戦闘機としてもよく知られています。

その後、第2次世界大戦は1945年9月2日の日本の降伏文書への調印をもって終結し、連合国軍の機関である連合国軍最高司令官総司令部(General Headquarters, the Supreme Commander for the Allied Powers、略称:GHQ/SCAP)より航空機の開発の禁止命令が出されました。

7年後の1952年のサンフランシスコ講和条約で禁止が解除されてやっと航空機の開発が再開することになりました。

民間では、そこから、国産旅客機の開発が進められましたが、人材の他業界への流出、資金力や米国との貿易交渉もあって事実上旅客機全体の開発は難しくなり、一部の部品を自力で開発することは在っても、ライセンス生産することがほとんどという状況となりました。

2008年には、三菱重工をベースに設立された子会社の三菱航空機社が、純国産の小型旅客機三菱スペースジェット(旧MRJ)の開発を進めました。

何度も遅れはありましたが2021年に初号機が市場投入される予定です。

国では、自衛隊の戦闘機である純国産のF-1が製造され1977年に初配備されました。

しかしながら、後継のF-2の国産開発はメリカの介入(と言われている)によりライセンス生産となりました。

今日現在、次世代機として純国産によるF-3の開発を目指して尽力しているところです(外国と共同開発になる可能性もまだ残っていますが)。

 

宇宙開発の歴史

まず、日本独自のロケット開発は、1931年にさかのぼります。

第2次世界大戦敗戦後は、航空機同様にしばらく開発を禁じられました。禁止解除後の1955年4月に、糸川英雄氏を中心にペンシルロケットの水平発射実験をおこなったことを皮切りとして開発に熱が入っていきました。

敗戦から15年後の1970年2月11日には、国産の固体燃料型のL-4Sロケットで日本発の人工衛星が鹿児島から打ち上げられました。

その後、米国のいわゆる介入があり商用衛星の打ち上げに必要なロケットの大型化では遅れをとらざるを得なくなりましたが、観測・科学衛星を打ち上げる実績は着々と積んでいきました。これは、後の小惑星探査はやぶさプロジェクトの成功にも繋がっています。

1998年の北朝鮮のミサイル実験以降、情報収集・防衛目的での宇宙利用が盛んになり、かつ国際環境の変化に伴って日本独自の宇宙開発の意義にも変化が生じてきました。

2000年初頭、宇宙開発に携わる3つの組織、宇宙科学研究所(ISAS)、航空宇宙技術研究所(NAL)、そして宇宙開発事業団(NASDA)の統合により宇宙航空開発機構(Japan Aerospace Exploration Agency、JAXA)が発足し、ロケットの大型化でも実績を出していくようになりました。

2008年には、宇宙開発の中心をそれまでの文部科学省から内閣総理大臣の責任の下に移すことを見据えて、「宇宙基本法」が制定されました。

これを機に、国としても民間を巻き込んだ宇宙産業の日本における基幹産業化を目指す方針が打ち出され、宇宙ベンチャーの立ち上げが加速しました。

 

宇宙法とは

さて、ここからは宇宙にまつわる法律の話です。

まず、「宇宙法」という言葉を見聞きしたことがあるかもしれません。

実は、宇宙ビジネスを成り立たせる上で関わってくる法律の総体を表しており、「宇宙法」という名称の法律はありません。

この宇宙法は4つの領域に分けて整理されています。

一つは、「国際公法」。国と国の関係を規律するルールで、条約などはその一つです。

その他、国境を跨ぐ私(法)人と私(法)人の関係を規律する「国際私法」、国と私(法)人を規律するルール「国内公法」そして「国内私法」があります。

 

具体的には、ビジネス全般に関わる、民法、会社法、金融商品取引法などはもちろんですが、宇宙ビジネスにおいて、部品の調達や製造物の輸出をする場合には「関税法」や「外為法及び輸出管理令」についても理解しておく必要があります。

その他にも、知的財産や電波の取り扱いに関するものなど幅広い分野に渡って法律が関わってくる場合もあります。

宇宙法の概要を掴みたい方は以下の参照①を、しっかり学びたい方は参照②をご参考ください。

参照①:宇宙法とは何か、宇宙ビジネスを起業する上で知っておきたい法律まとめ

参照②:『宇宙ビジネスのための宇宙法入門(第2版)

また、地球上の交通情報も天気情報と密接に関連しているように、利用する宇宙の環境について把握することも、地球にいる人々の日常生活にとっても重要となります。

社会インフラに影響を与えるような宇宙環境変動のことを「宇宙天気」と呼び、既に宇宙天気を予報する情報配信サイトも生まれています。

宇宙天気についてご興味がある方は、以下リンクをご参照ください。

参照:3分でわかる宇宙天気と宇宙法①

 

 

 

営業パーソンにとってチャンス一杯の古くて新しい宇宙ビジネス

少々前振りが長すぎました。営業に関わるお話しをしていきます。

きょう現在の宇宙ビジネスは、10社ほどのベンチャー企業が活躍していますが、日本においてはまだ黎明期と言えます。

事業展開も、社長自らが広告塔になり認知度を高めトップ営業により成果を出している状況です。

そんな中、営業人材の活躍の場にもなりえる事業開拓や経営・事業企画に関する募集が最近ちらほら出て来ました。

市場に眠っている課題や新しい需要を見極める、あるいは企業の経営課題を嗅ぎつけるような視点を持って常日頃営業されている方々であれば、業種を問わず挑戦してみる価値があるのではないでしょうか。

中でも、軌道上衛星ビジネス、つまり地球の周りの宇宙空間で衛星を使って行われるビジネスに関して言えば、他と比べても課題が少なくアイデア勝負だという方もいるくらいです。

それ以外にも、以下のようなビジネス領域があります。

  • ロケットや人工衛星の製造ビジネス
  • ロケットの打ち上げビジネス
  • 衛星データを用いたビジネス(軌道上衛星ビジネスの一つ)
  • 通信衛星を用いたビジネス(軌道上衛星ビジネスの一つ)
  • 有人の商業宇宙旅行ビジネス
  • 惑星の資源探査ビジネス
  • 惑星移住ビジネス

同時に、民間ビジネスとして成立させていく上で関連する法律やルール・ガイドラインが未整備な状況であることも認識しておきましょう。

参照:

 

まとめ

今回は、宇宙ビジネス(最近ではNewSpaceと呼ぶ)の概要そして関連する法律についてお話ししました。

国としては世界から遅れをとっていた宇宙開発が、民間主導の宇宙ビジネスとして注目されてから20年ほどとまだ新しい分野です。整備すべき課題もまだまだあり、国内外の法律やガイドラインを理解しつつ事業に携わる必要があることをお話ししました。

その上で、パイオニア精神、情熱一杯の営業パーソンがますます業界から求められてくる中で、宇宙ビジネスに飛び込んでみたいという方は関連する法律について積極的に知識をつけておいた方が良いことをお話ししました。

 

今回も最後までお読みくださり有難うございます。

 

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