No.037 株式会社の歴史
今回は、No.31 企業の歴史 の記事に関連した、「株式会社」という考え方がどのように成立するにいたったのか背景をお話します。
富を求めて探検家が「世界」を広げる大航海時代へ
15世紀ごろ、西方のはずれにあったポルトガルやスペインは、地中海を中心に交易ルートとして活用していたオスマン帝国やベネチアと違い、北方や地中海の当方ではなく南方の西アフリカに新たな富の活路を見出そうとました。
丁度このころ、航海技術の向上により羅針盤を手にしたポルトガル人やスペイン人が、アフリカ最南端の喜望峰周りの新たな海路を開拓して富と名声を求めて航海していったことが、後の大航海時代のブームに火をつけるきっかけとなったようです。
新大陸(アメリカ大陸)から砂糖を
富を求めて現在のアメリカ大陸であるいわゆる新大陸にたどり着いたイタリア人は、現地で綿花、たばご、砂糖などをプランテーション農法で大量栽培に成功し、ヨーロッパに持ちかえることができるようになりました。
特に、当時高価だった「砂糖」が輸入されるようになりヨーロッパでも北方の食生活に大きな変化をもたらしました。
アジアからは香辛料を
他方、イタリア人だけでなくスペイン人、ポルトガル人、イギリス人がアフリカ大陸の海側を回ってしてアジアにたどり着くようになり、胡椒やシナモン、サフランなどの香辛料が大量に輸入されるようになりました。
元々、薬でもあり食料の保存のための臭い消しとして重要であった香辛料は、アジアに対する良い意味での迷信も助けて、ヨーロッパ全土に広がり食生活を激変させました。
金や銀と同じような「価値」で取引がされていたということは、ヨーロッパ諸国の貧しい食生活の改善が切実な「需要」だったという事の証なんでしょう。
そして株式会社が生まれた
株式会社の起源
さて、新大陸アメリカ、そしてアフリカやアジアに先鞭をつけていったスペイン・ポルトガルも、やがてオランダ・イギリスにとって代わっていきます。
そして、慶長7年(1602年)、世界初の株式会社「オランダ東インド会社」が設立されました。
時は、徳川幕府が発足する1年前。
( 余談ですが、世界で最初に発行された株式は、天文22年(1553年)にイギリスで設立された合資会社「ロシア会社」といわれています。
また、日本で最初に生まれた株式会社は、明治維新の後、明治6年(1873年)に誕生した第一国立銀行だそうです。)
株式会社という考え方が成立した背景
上記したように、探検家が富を得るため超ハイリスクな航海をしていました。
一説では、船の遭難や難破、敵からの襲撃に見舞われたり、疫病が感染し船内に蔓延したり、あるいは船員の内部抗争も起こったり、乗組員の生還率は20%にも満たないものだったようです。
それでも、不屈の精神で挑み、才覚と幸運に見舞われれば王族・貴族にも劣らないほどの富を得られる可能性を考え、そこにはパトロンと呼ばれる航海を応援するお金持ちの出資者がいました。
とはいえ、そんな大金持ちといわれる出資者でさえもやはり出資した分すら一銭も戻ってこないハイリスクハイリターンであったため限度はありました。
そこで、探検家は、1人の大金持ちよりたくさんの小金持ちから出資してもらう方法を考え出したのです。出資した分に応じて、航海の後に利益分を分配するという方式に。
出資してくれた人には、その証(あかし)として文書を発行しました。この文書が、株式のはじまりとなりました。
( 余談ですが、この時、株式を取引する場所として「アムステルダム証券取引所」がオランダに設立されました。
それまでは株主に無限責任が課された株式が取引されていたところに、新たに有限責任性を取り入れ、株主が出資額以上に失わない仕組みとしため、株を買いやすくなり売買が活発化する取引所として発展していくことになりました。)
このように、「探検家」は「出資者」から集めた資金で船を買い、「船員」を雇って航海を実現させました。
これら、3人の登場人物が異なる役割を果たす事で初めて航海が成り立ったわけです。
株式会社の基本的な仕組み
リスクを取って事業を起こしたいという起業家が、複数の人からお金を集めるのに株式会社を作り、“お金をだしてもらいましたよ”という証拠に株式を発行し、その株式(証書)を持っている人のことを株主と呼びます。
そして、起業家はその株主からのお金を使って設備を買い、社員を雇い、事業を始めます。
うまくその事業が軌道に乗れば、起業家は利益の中から役員報酬をもらい、社員は給料とボーナスを受け取ります。
そして株主はというと、その出資比率(いくらお金をだしたか)に応じて配当を受け取ったり、その株価の値上がり益を得たりすることができます。
つまり、まさに航海のように、経営者、株主、そして社員という3つの登場人物がそろって初めて、会社は経済活動(営業)が成り立つわけです。
この3つの立場に貴賤はなく、それぞれが自分の役割を果たして初めて経済活動が持続すると考えて良いでしょう。
まとめ
今回は、株式会社という仕組みの元になった歴史的背景についてお話し致しました。
いつの時代でも、需要と供給のバランスがものの価値を決めるというのは真実であるようです。
営業パーソンとしては、業務に直結する内容ではありませんが、アイスブレイクあるいは経営者と話をする際のネタにしても良いかもしれません。
今回も最後までお読みくださり有難うございます。